 母の日のバラと母の写真(27年5月10日)   映画゛幕末゛で坂本竜馬役の中村錦之介さん   映画゛幕末゛で芸者役の江利チエミさん   映画゛幕末゛の長崎料亭での宴席風景   映画゛幕末゛で酔っぱらいの演技をする私(奥田)   歌舞伎座での私(左から2番目) |  昨日の5月10日は母の日でした。私の母は20年前に他界しておりますので、母の日に私がやっている事は、ささやかな花束を買ってきて、母の写真の前に飾る事位でしかありません。今年は家内がきれいなピンクと真っ赤なバラの花を見つけてきてくれたので、それを花瓶に飾ってもらいました。
さて、今年の母の日の前日、あまりの偶然とはいえ、私には本当に不思議としか言いようの無い出来事に遭遇する事になりましたので、今日のコラムに綴る事にいたします。
朝の気功・太極拳教室を終えて家に帰り、昼食をとった後長椅子に横たわり、うたたねをしていた私は、突然左足の痙攣による激痛に見舞われ、長椅子の上でのたうちまわっていたのでした。と、そんな時、TVを見ていた家内が『お父さん、お父さん、今TVで¨幕末¨と言う映画をやっているけど、ひょっとしてお父さんと何か関係があった映画ではないですか・・・???』と言うのです。私はもしかして¨あの幕末¨ではないかと思い、左足の激痛を必死にこらえながらも、両目をパッチリ開いて、しばしTVを見つめていたら、まさにその映画は私の知るところの¨あの幕末¨なのです。
この映画(幕末)が世にでたのは、今から半世紀程も前の事なのですが、私はその当時のいきさつを知っておりますので、この機にお話ししておこうと思います。
今年のNHK−TV、日曜夜8時から放映されている大河ドラマは¨花燃ゆ¨でありますが、大河ドラマの第一回の作品は1968年、坂本竜馬を主人公にして作られた¨竜馬がゆく¨(原作司馬遼太郎、主演北大路欣也)でありました。この¨竜馬がゆく¨は、NHK―TVで放映された直後か殆ど時を同じくして、今度は東京東銀座にあった旧歌舞伎座の舞台に取り上げられての長期公演となりました。この舞台での主演は今は亡き中村錦之介、舞台監督は時代劇映画監督としてあまりに著名な伊藤大輔さんでありました。 そして坂本竜馬を主人公にした第3部作こそは、当時の中村プロダクション制作による映画の¨幕末¨なのであります。この映画の中での主人公を演じたのも歌舞伎座公演と同じ中村錦之介、伊藤大輔監督のコンビによるものでした。
坂本竜馬は今では誰もが知る土佐藩(今の高知県)の武士でした。私も土佐の高知出身ですが、そんな事がご縁で、私は偶然にも上記の3作に、土佐弁の指導役に抜擢され、それに係っていたのでした。そして気が付いてみると、方言指導役の私が、それら3部作すべての作品の片隅に、役者として出演していたのでした。 今になって思う事は、多分私の方言指導の労をねぎらって、監督さんが示してくれたご厚情によるものであったに違いありません。後日伊藤大輔さんから長文の巻き手紙が届いていた事をはっきりと記憶しているのです。
さて、映画¨幕末¨での私の役は、とある長崎の料亭で、芸者役の江利チエミさんの歌・三味線に合せて、とことん酔っ払いを演じる土佐藩の侍の役でありました。 私はそんなシーンの役を演じさせられた覚えは50年を過ぎた今でもかすかに記憶の中に残ってはいるのですが、どんな演技をしたのかと言う記憶は殆ど忘れておりました。それが何と、今年の母の日の前日に偶然目にする事となった映像には、ものの見事に映し出されていたのです。あまりの酔っ払い振りに、(勿論その時お酒は1滴も飲んではおりませんし、私自身はお酒は飲めません)私は一瞬自分の目を疑う程の見事な酔っ払いを演じていた自分を発見して、愕然としたのです。そればかりか、まわりの侍たちに意見をするセリフの演技までしていたのですから、まさに青天の霹靂とも言える一瞬でした。
どうしてこんな映画のシーンが50年近くも過ぎて、しかも母の日の前日に私の目に飛び込んで来たのであろうかと、私は本当に不思議でならないのですが、これは最近急激に足腰が弱って来て、元気度が半減してきている私への母からの励ましの表れではないかという気がしてならないのです。私は頑張らねばならないと決意を新たにしているところです。
¨幕末¨の映画の中には、今は亡き名優の小林桂樹さん(西郷隆盛役)や、三船敏郎さんや、今も活躍されている仲代達也さん(中岡慎太郎役)、当時20歳位のういういしい吉永小百合さん(お龍の役)などの姿も映っていて、感慨深いものがありました。
今年の母の日は、本当に思いもかけない母の日となりましたが、もしかしてこれは天国の母からの貴重なプレゼントだったかも知れません。偶然とはいえ不思議な運命のいたずらに感謝をしないではいられません。合掌です。 (2015・5・11日の記)
追伸:NHK−TVの『竜馬がゆく』と歌舞伎座公演の『竜馬がゆく』については私のコラムNO86、87に幾分書き綴っておりますが、映画¨幕末¨についてはどこにも書き残してはおりません。理由は殆ど忘れかけていたからです。 昨年の暮れに荷物を整理していた際、家内が¨幕末¨と書かれた台本を見つけてくれたのですが、現在どこにしまったかの記憶がないと言う事なので、探し当てればその当時の事が、もっと詳しく思い出せる事と思っています。
|